医療現場において、受付や会計、カルテ管理、レセプト処理などを担う医療事務スタッフは、欠かすことのできない存在です。しかしながら、近年は人材の確保が難しくなっており、採用に課題を感じている医療機関も少なくありません。
そんなときに選択肢のひとつとなるのが、人材派遣サービスの活用です。この記事では、医療事務の派遣を検討している医療機関に向けて、活用のメリットや注意点、任せられる業務範囲などを紹介します。
日本全体で労働人口が減少しているなか、医療業界も例外ではなく、人材確保の難しさが年々深刻になっています。特に中小規模のクリニックや、郊外にある医療機関では、求人を出しても応募がほとんどないといったケースも少なくありません。
一方で、地域の高齢化が進むなか、医療サービスの需要はむしろ増える一方です。患者数の増加にともなって現場の業務量も増えており、「人を採用したいけれど、集まらない」という状況が続いています。こうした“人手を必要とする現場”と“労働人口の減少”が重なり、医療事務の人材不足が深刻化しているのが現状です。
医療事務というと「受付の人」というイメージを持たれがちですが、実際の業務はそれだけにとどまりません。保険証の確認や患者情報の登録、カルテの管理、診療報酬請求(いわゆるレセプト業務)、医師の事務作業補助など、多岐にわたる仕事をこなしています。
とくにスタッフ数が限られているクリニックでは、一人でいくつもの業務を担当することも珍しくなく、業務量の多さから心身の負担が大きくなりがちです。さらに、患者さんからの問い合わせ対応やクレーム処理など、接遇面での気配りも求められるため、ストレスを感じやすい職種でもあります。こうした業務の広さや負荷の高さが、離職や人材確保の難しさにつながっているのです。
最近では、多くの業界で柔軟な働き方が進んでいます。リモートワークの導入や給与水準の見直しが進むなか、医療事務職はそうしたトレンドの恩恵を受けにくいという実情があります。
医療機関では制度上の制約もあり、在宅勤務がほとんどできません。また、診療報酬の仕組みによって人件費の上限が決まりやすく、給与の引き上げも難しいのが現状です。結果として、他の業種と比べて働きやすさや待遇面での魅力を打ち出しにくく、若年層や子育て世代を中心に、他業界へと人材が流れていく傾向が強まっています。
こうした流出の動きが、医療事務職の人材不足に拍車をかけているのです。
派遣の最大の特長は、期間限定で人材を柔軟に確保できる点です。
たとえば、スタッフの産休・育休による一時的な欠員補充や、レセプト期間・健康診断シーズンなどの繁忙期対応など、「今だけ」「この時期だけ」人手が欲しいというニーズに応えてくれます。
正社員採用のように雇用期間の縛りがないため、状況に応じて計画的に人材を増減させることができます。
派遣スタッフの多くは、すでに医療事務の実務経験がある人材です。受付や会計の流れ、レセプト業務、患者対応など、医療機関ならではの業務に慣れている人が多数登録しています。
また、派遣会社によっては、就業前にビジネスマナーや医療知識、接遇などの研修を実施していることもあり、配属当日から安心して任せられる場合もあります。
教育にかかる負担を最小限に抑えられるのは、現場にとって大きなメリットといえるでしょう。
正社員やパートを採用する場合、求人広告の掲載から書類選考、面接、入社後の労務管理まで、すべてを院内で行う必要があります。一方、派遣を利用すれば、求人活動や社会保険手続き、給与計算などの業務を派遣会社が担ってくれます。
これにより、医療機関は本来の業務である診療や患者対応に専念できるようになり、限られたリソースの中でも運営効率が上がります。
派遣には、一定期間勤務した後に双方の合意があれば直接雇用へ切り替える「紹介予定派遣」という形態もあります。
採用面接や履歴書だけでは分かりづらい「現場との相性」「仕事ぶり」を見た上で、正社員登用するかどうか判断できるため、採用ミスマッチの防止につながります。
人材派遣は非常に便利な仕組みですが、すべてがメリットばかりというわけではありません。サービスの利用にあたっては、あらかじめ理解しておきたいデメリットや注意点もあります。
派遣スタッフは基本的に「即戦力」としての活躍が期待されますが、医療機関ごとの細かなルールやシステム操作、院内の雰囲気などには慣れていないこともあります。
とくに電子カルテの操作方法や、職員間の連携ルールなどは、一定の引き継ぎやフォローが必要になることがあります。あらかじめ「誰が教えるか」「どの程度の時間を見込むか」を想定しておくと安心です。
派遣スタッフはあくまで一時的な戦力として働くため、長期的な視点での人材育成や業務改善には関わりにくいケースもあります。
たとえば「こうすればもっと効率が良くなる」といった気づきや、院内で独自に蓄積されたノウハウを継続的に活かすには、正社員のような長期雇用が適している場面もあるでしょう。
人材派遣は、労働者派遣法という法律に基づいて行われるしくみです。そのため、医療機関側にもいくつかのルールや制約が設けられています。
たとえば、紹介予定派遣を除いて、派遣スタッフに対する面接や履歴書の事前提出といった選考行為は禁止されています。また、派遣先には責任者を1名以上選任することが義務づけられており、派遣スタッフに対する指揮命令や労働環境の管理責任は、医療機関側にあると定められています。
ただ、こうしたルールについては、派遣会社が手続きや対応方法を丁寧にサポートしてくれることも多く、必要以上に難しく感じる必要はありません。
求人内容や職場環境について丁寧にヒアリングし、最適な人材をマッチングしてくれるかは重要なポイントです。
たとえば、担当者が病院やクリニックの体制・特色を把握しようと努め、求めるスキルや避けたい条件を的確にくみ取ってくれるかどうか。こうした対応は、派遣後の満足度を大きく左右します。
さらに、候補者が複数名いる場合には、それぞれのスキルや経歴を比較できるよう、客観的に提案してくれる会社であれば、より納得感のある人材選びにつながります。
派遣会社によっては、就業前に研修を行ったり、スキル向上のための講座を用意していたりするケースもあります。
たとえば、接遇マナーや医療用語の基礎研修、レセプト業務の講座、医師事務作業補助者としての知識を学べるプログラムなど。こうした教育体制があると、派遣先としても安心してスタッフを受け入れることができるでしょう。
長く安定して働いてもらうためには、就業後のフォロー体制も重要なポイントです。
派遣スタッフが安心して働けるよう、定期的に業務の様子や職場での悩みを確認してくれる仕組みがあるかどうかをチェックしましょう。また、医療機関側が気になる点を相談した際に、迅速かつ柔軟に対応してくれる体制が整っていることも大切です。
万が一トラブルが起きた場合も、間に入って適切にサポートしてくれる派遣会社であれば、信頼関係を築きやすくなります。こうしたフォロー体制が整っていれば、単なる一時的な人手不足の解消にとどまらず、長期的かつ安定的な人材活用にもつながります。
ひと口に「医療事務」といっても、その業務内容は実にさまざまです。なかには、法律や現場のルール上、派遣スタッフには任せられない業務もあります。ここでは、派遣スタッフに任せられる仕事と、任せられない仕事を整理してみました。
看護師や医師など、資格を必要とする職種が行う医療行為は、たとえ経験があっても派遣スタッフに任せることはできません。たとえば、採血や注射の補助、医療器具の管理などが該当します。
また、診断書や紹介状の記載補助は「医師の指示があれば可」とされることがありますが、独自判断での作成や入力は不可です。受付で体調を確認したり、トリアージ的な判断をしたりする業務も、医療事務の範囲を超える恐れがあります。
以下のような条件に当てはまる場合には、例外的に一部業務を派遣スタッフが担うこともあります。
医療事務の人材派遣を利用する際は、契約の前後でどのような流れになるのか、あらかじめ把握しておくと安心です。派遣会社ごとに多少の違いはあるものの、基本的には以下のようなステップで進みます。
派遣会社には、さまざまな経験やスキルを持った医療事務スタッフが在籍しています。希望に近い人材を紹介してもらうには、「どんな人に来てほしいか」「どんな業務をお願いしたいか」といった情報を、最初の段階でできるだけ具体的に伝えることが大切です。
ここでは、医療事務スタッフを派遣で依頼するときに伝えておくとよいポイントを5つご紹介します。
まず伝えておきたいのが、施設の規模や診療体制についてです。たとえば、病床数や1日の平均外来患者数、診療科目の数、医師や看護師、常勤スタッフの人数などがわかると、派遣会社は現場の忙しさや業務量のイメージをつかみやすくなります。
加えて、レセプト業務を行うかどうか、外来と入院の業務が分かれているか、事務スタッフの役割分担なども伝えておくと、どのようなポジションの人材が求められているのかが明確になります。
使用中のレセプトコンピュータ(ORCA、HOPEなど)や電子カルテシステムの種類、操作レベルの目安(入力中心か、多少の設定変更まで任せたいか)を伝えましょう。
さらに、求めるPCスキル(タイピング速度やExcel・Wordの使用頻度など)についても伝えておくと、ミスマッチが起きにくくなります。
派遣スタッフにどんな業務を任せたいかは、できるだけ詳しく伝えておきましょう。医療事務といっても、受付や会計、電話対応、カルテ管理、レセプト作成、医師事務作業補助など、業務内容は多岐にわたります。
たとえば、「受付と会計のみを担当してほしい」「レセプト業務まで一通り対応できる人が理想」「医師の指示に沿った書類作成などもお願いしたい」など、希望する担当範囲を明確にしておくことで、ミスマッチのリスクを大きく減らせます。
勤務条件については、曜日や時間帯、残業の有無、休憩時間などの基本的な内容に加えて、就業環境に関する情報もあわせて伝えておくと親切です。たとえば、制服の有無や貸与か持参かといった点、車通勤が可能かどうか、駐車場の有無、交通費の支給条件などは、スタッフの働きやすさに直結します。
また、更衣室やロッカーの有無、休憩スペースの雰囲気などもあらかじめ共有しておくと、派遣スタッフの不安を軽減できます。
スキルや経験に加えて、「こんなタイプの人が職場になじみやすい」といった人物像を伝えておくことも大切です。
たとえば、「明るくてハキハキした人が多い職場なので、そういうタイプが合いそう」「落ち着いた対応ができる方が向いている」「患者さんとのちょっとした会話を大切にしている」など、実際のスタッフの雰囲気や患者層に合う人柄をイメージとして共有しておくと、紹介される人材のフィット感が高まります
医療事務スタッフの人材確保が難しくなるなか、「派遣」という選択肢は、必要なタイミングで、必要なスキルを持つ人材を確保できる心強い手段のひとつです。求人募集や面接、労務管理といった煩雑な手間を軽減できる点も、日々の診療や患者対応に追われる医療現場にとって大きなメリットといえるでしょう。
派遣社員を採用するにあたっては、教育や引き継ぎ、派遣法の理解など、いくつか注意すべき点もありますが、メリットとデメリットをふまえたうえで上手に活用すれば、安定した体制づくりにつながります。
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(※1)参照元:株式会社エヌエフエー公式HP(https://www.nfa-g.com/new-model.html)
(※2)参照元:株式会社スタッフサービスグループ公式HP(https://www.staffservice.co.jp/client/)